地域を支える新旧の「集会施設」:神山町神領地区の調査が始まりました。

2017年8月8日から10日の3日間。徳島県神山町に建設中の集合住宅のコミュニティ研究の基礎調査として、神領地区の地域自治のかたちや地縁団体の集会施設の調査を行いました。今回のフィールドワークメンバーは、三木さん、小田くん。


台風のため1日半遅れて神山入りした初日は、まず高田さんに集合住宅プロジェクトのの進捗を教えてもらい、終了。翌日は朝から大埜地の馬場さんを訪問。神領地区の自治組織がどのように運営されているかをうかがいました。神領では各地区を「名(みょう)」と呼び、それぞれの戸主会が地域をまとめているとのこと。


詳しくわかりやすく説明してくださった馬場さん。


その後は、集合住宅の敷地の様子を見に。すでに解体工事は終わり、砂利が積まれています。


ちょうど同日に設計チームの会議があり、田瀬さん、山田さんとも挨拶。


現場事務所を訪問。


保管されている町産材。このプロジェクトのコンセプトの一つは、できるだけ「地域にあるものでつくる」こと。神山にある杉で、地元の大工さんによって建てる住宅。また、地元の山に元からあった植生を生かしていくための種取りWSなどもあり、地域の自然環境を軸に、高校や林業関係者など地元のさまざまな人たちが、集合住宅の建設過程でつながっていっています。


住宅棟の模型。今年度は、まず4世帯が入居できる住宅が完成する見込み。


その後は、各名ごとにある地域の集会施設の調査へ。


こちらは、谷の会堂。

今回めぐった9つの集会所は次をご覧ください。
「神山町神領地区の会堂」


その後は、鬼籠野地区西方にできた「住みはじめの家」を見学。大きな古民家を改修したシェアハウス兼キッチン付きイベントスペース。誰かがずっと住むための家ではなく、神山に移住してくる人が一時的に住む場所。お試しで住む間に、地域の情報と関係性が得られるという「縁側」的な仕組み。地元の人にとっては、空き家をどう改修し、どう使っていけるのかという未来のビジョンを共有するための仕組みでもあるそう。そのため、今後は各地区に同じようなモデルケースをつくっていく予定とのこと。いろいろな関係性ののりしろになる縁側づくりが戦略的かつ上手な神山町です。


つなぐ公社に戻って、今度は江戸時代の神領地区の地図を地元の方が開設したビデオを鑑賞。今日めぐってきた各地区の地図を見ながら、もう一度地政をなぞる良い復習になりました。


もともとVHSで録画されていた映像を記録した貴重な資料。


3日目が最終日。午前中は、コンプレックスで昨日のフィールドワークの資料のまとめ。


昼食は、神山町の最も西側の上分地区にある「カフェ・ブロンプトン」へ。かわのほとり、製材所の隣にある素敵な場所。


美味しいピザをいただきました。


午後は、役場の総務課にお邪魔し、神山町史や人口データをいただいたり、名の区分について教えてもらったり。名は厳密には行政区分とずれている点もあり、はっきりした資料がないのだとか。


話を聞いたり、複数の資料を集めて、少しずつ区切りを確定。


つなぐ公社に戻って報告していると、杤谷さんが手描きでつくったという字界図を見せてくださりました。おお!一同感激。一気に資料のまとめが加速しそうです。

神山町は多くの移住者が活躍している町で、カフェ・オニヴァやWEEK神山といったここ数年でできた素敵な場が、地域内外の人たちの集まり、出会う場所になっています。我々の調査では、そうした新しい場だけではなく、旧来の会堂や公民館、戸主会や消防団といった自治組織を含めて、新旧の地域の「集会施設」や活動を整理することで、新しくできる集合住宅のコモンのあり方と活用の方向性を考えていく予定です。